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 ある秋の朝10時45分、同志社大学京田辺キャンパスの一角では文学部英文学科の必修課目であるリスニングの授業が始まっていた。教室内ではパソコンの前で学生がeラーニング教材である『スーパー英語』にログインして指示を待っている。そこに担当の菅原真理子准教授が現れ『スーパー英語』のコンテンツを利用した、恒例の5分間テストを行なった。

 いつもの光景である。簡単なテストだが、すぐに点数がモニターに表示される。その点数を自分で出欠表に書いて提出するのが習わし。菅原准教授は出欠表を受け取りながら、テストの結果が表示されているモニターと出欠表に書かれた点数とが一致しているかどうか、確認していく。

 こうして、実にスムーズに授業が始まっていく。

2つの目的で始まった
『スーパー英語』の導入

同志社大学文学部英文学科は同志社英学校の開校(1875年)以来の伝統を誇る名門学科。英文学科生は約1,350人在籍しています。ここに、eラーニング教材の『スーパー英語』が導入されたのは、5年前の2006年のことです。

伝統ある名門学科になぜ『スーパー英語』が採用されたのか。英文学科主任で導入時の判断にも参加された、金谷益道准教授は次のように語っています。

「採用の決め手になったのは2つのポイントからです。まず第1は自習用教材として。基礎的な文法知識の復習をしたい、授業外でさらに英語を学びたいという学生の声に応えるために、私たちは優れた自習用の教材を探していました。

そしてもう1つはTOEFL テストに対するツールとして。英文学科の学生はTOEFL ITPテストを無料で年2回学期末に受験することができますが、そのための勉強にTOEFL対策のトレーニングがふんだんに盛り込まれたこの『スーパー英語』が役に立つと考えたのです」

卒業生の
「卒業後も使いたい」のひと言

『スーパー英語』を導入当初から利用しているのが菅原真理子准教授です。菅原先生は実際に5年間この教材を使った結果を、このように分析しています。

「この教材によって何かが大きく変わったかと問われれば、それを数値化しているわけではないので、成果を正確に伝えるというということはできませんね。でも、この前卒業生に会ったときにこんなことを言われたんです。「卒業したら『スーパー英語』が使えなくなった。卒業してからも使えるようにしてもらえませんか」と。もちろんそんなことは不可能ですけれども、ここにこの教材の本質があるのだと思います。彼らはいつもTOEFLやTOEICのテストの前に使っていたと言うんです。それから海外旅行に行く前に、とか。つまり何かのイベントの前に使う。これは、効果を期待してのことなのではないでしょうか。それが、卒業生の『卒業してからも使えるようにしてもらえませんか』という問いに滲み出ている」

菅原先生は、英語の勉強というのは、基本的には学ぶ側の問題なのだといいます。
「経験から言うと、私たちはきっかけを与えているにすぎません。自分の学ぶプロセスが重要なのですから。そういう意味で、学びたいと思ったときにすぐ側に学べるツールがあるというのは大きいと思います。そんなベネフィットは他にありません」

自分の工夫で
さらに有効活用

実際にそんなベネフィットを享受している学生が、菅原先生のクラスに何人かいます。1回生(2011年4月入学)の油田 名彩(あぶらだ ないろ)さんはその一人。

ディクテーション

「ディクテーションの勉強にこの『スーパー英語』を使っていますが、方法は簡単です。まず英文を聞き、全文を一気にタイピングするという形ですね。ただ、短い簡単な文はすぐにできますが、長い文になると1回聞いただけではタイピングできないんです。結構難しいです。でも、ヒント機能があるので、それを使えば聞きとれなかった文も理解できるようになります。でも私は(その機能を使って)何回もちょこちょこと聞きながら少しずつ文章を打っていくというのでは練習にならないと思って、また別の日にトライします。とにかく全文を一気にタイピングできるまで繰り返し何度もトライするという方法をとっています(油田)」

油田さんは、この勉強法を高校のとき先生に教わったのだと言います。その時は『スーパー英語』のようなソフトを使ったものではなかったから、大学生になってディクテーションの学習が楽しくできるようになったと言えるでしょう。留学も視野に入れており、将来は航空会社で働きたいと夢を膨らませる油田さんは、その目的のためにこうしたツールを自分で工夫して使いこなしているのです。

 同志社大学は全学を挙げて留学に積極的に取り組んでいる。代表的な取り組みは「同志社大学外国協定大学派遣留学生制度(以下、派遣留学)」で、学生交換協定を締結している海外の協定校に1年間または半年間留学するプログラムである。留学中は同志社大学の学費を納付するのみで、留学先大学の学費を支払う必要はないという学生にとっては大変メリットがある制度だと言えよう。

 そして、この制度を利用して多くの英文学科生が海外への留学を果たしているが、その背景に存在しているのが『スーパー英語』なのだという。

難関の海外大学へも
選ばれるのは英文学科生

「この派遣留学で海外に行く学生の中でも留学実績の高いのが文学部英文学科です。海外協定大学への英文学科生の留学件数は毎年学内で1位を誇っています(金谷)」

その実績はデータを見れば、一目瞭然だと金谷先生は説明してくれました。

確かにその通りです。

例えば2011〜2012年度のデータをみると、大学全体で候補者に選ばれた学生数が104人であるのに対し、英文学科生で候補者に選ばれた学生は34人と、留学生に占める英文学科生の比率は実に32.7%にも及んでいることが分かります。大学全体に占める英文学科生の比率が5.3%であるにも関わらず、この数字なのです。

なかでも非常に入るのが難しいとされる、カリフォルニア大学(ロサンゼルス校:UCLA、バークレー校:UCB等)へは英文学科から8人の学生が選ばれています。またケンブリッジ大学セント・キャサリンズ・コレッジは大学全体で1枠しか設けられてない難関ですが、やはり英文学科生が選ばれています。

『スーパー英語』の効用を上げる
留学決定者が多い

金谷先生は、この背景についてこう語ります。

金谷先生

「TOEFL ITPテストを受けさせている背景にあるのが、派遣留学生制度なのです。必須ではありませんが英文学科生にどんどん応募してもらうことを推奨しています。協定を締結している海外の大学の多くは、出願資格としてTOEFL ITPで550のスコアを求めています。TOEFLの授業を準必修にしているのもそのためですし、それ以上のものを求める学生のためにこの『スーパー英語』を必要としたのです」

金谷先生によると、5年前の『スーパー英語』導入時には、学生には単なる自習用教材としてしか認識されていなかったのですが、授業の際にデモンストレーションを行ない、授業の課題として『スーパー英語』を利用することによって、この教材が学生の間に浸透していったのだといいます。

「英語における4つの技能(reading、writing、listening、speaking)の必修クラスのうちreadingとlisteningについてはこの『スーパー英語』を活用して、アカデミックかつ実用的な英語を学んでもらいました。派遣留学制度で留学生に選ばれた英文学科生に聞くと、多くの学生が『スーパー英語』を利用してTOEFLスコアを上げたと語っています。これこそが実績ではないでしょうか(金谷)」

 この春から、同志社大学ではこの実績を踏まえて『スーパー英語』の次世代バージョンである『スーパー英語アカデミックエクスプレス2(以下、「スーパー英語2」)』を同志社大学全学(約2万5千人)で導入した。まさに次世代に向けた教育への取り組みが始まっているわけだ。

 この『スーパー英語2』にはさまざまな新しい機能が付加されているが、一番の目玉は「My Portfolio」という機能である。自分の学習の進捗状況や学習成果がひと目で分かるページで、これを見れば今自分がどの位置にいるのか、今後どうすればいいのかが分かる。また、学習の効果だけでなく、どれだけ自分が継続的に学習を費やしたかが分かる「学習マイレージ」などの機能もあり、努力そのものを評価もしてくれるのだ。

 同時に先生側が個々の学生のポートフォリオを管理できる「Class Portfolio」も付加されており、まさに教える側、教わる側が一体となって効果を上げることが出来るわけだ。

来春には
かなりの効果がでてくる?

「自分の位置づけが分かる、ということが学生のインセンティブになるんじゃないかと思います」と語るのは菅原先生です。

「英文学科は実際には9月(取材は11月)からの導入でしたのでまだ効果そのものは検証していませんが、いろいろな可能性が、このポートフォリオで生まれました。学習時はもちろんですが、例えば学習外でも担任の先生と学生との日誌のやり取りのような感覚で使えるんじゃないかと思いますし、大いに期待しています(菅原)」

菅原先生のリスニングのクラスでは、4月(春学期)に「レベル診断テスト (Placement Quiz)」を受けさせているといいます。10月(秋学期)に行なっているわけではないので、そのレベルがどう変化したかはまだ分かりませんが、今後は春学期と秋学期の両学期の最初にレベル診断テストを受験させ、どれだけ自分たちのスコアが春から秋にかけてアップしているかを、このポートフォリオ機能を使って確認できるようにしていきたいとのことです。そしてそこから何らかの学習効果が生まれるのではないか、と菅原先生は言います。

そして、今後への期待を述べるのは金谷先生です。
「先のことでしょうが(笑)バージョン3では、TOEFL iBTに対応したライティングやスピーキングのコンテンツや機能があればもっと充実してくるし、もっと使い勝手がよくなると思います(金谷)」

取材・文・構成  松室 哲生 (まつむろ てつお)
「週刊ダイヤモンド」編集長、ダイヤモンド社代表取締役専務を経て、08年2月、長岡哲生のペンネームで経済ミステリー『極秘資金』で作家デビュー
取材日 2011年11月10日 同志社大学京田辺キャンパスにて

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