top長崎大学経済学部は、文部科学省に採択されたグローバル人材育成推進事業の構想を実施するにあたり、語学力を向上するための学習環境整備の一環としてeラーニング・システムの導入を決定し、2014年度から新カリキュラムに基づく講義を開始するとともに、「スーパー英語 Academic Express 2」の活用を開始した。国際的な課題解決に取り組む人材の育成や経済学・経営学の知識を英語で運用できる能力の養成を標榜する同学部は、歴史的にも地理的にも海外に開かれた校風を特徴とし、社会や産業界を主導する人材を多数輩出してきたが、これを機にその知見とノウハウを全学に波及させ、グローバル志向の人材を輩出する国際的な大学としての位置づけを確立していく。

世界に飛び立つ人材の輩出へ
“GSRマインド”を持つ人材を育成

長崎大学の経済学部は、1905年(明治38年)3月に設立された長崎高等商業学校(長崎高商)を母体とする。当時の高等商業学校は、アジアで活躍する人材の育成を担う商業・商学に関する高等教育機関で、長崎高商は東京高等商業学校(現・一橋大学)、神戸高等商業学校(現・神戸大学)に次ぐ全国で3番目の官立高等商業学校として設置された。その後、改称や学制の改編を経て1949年(昭和24年)5月に長崎大学の経済学部として再編され現在に至る。経済学部が拠点とする片淵キャンパスには、長崎高商時代の建築物や施設が国の登録有形文化財として現在も保存され、学部・大学院を合わせて約1,800名(2014年10月1日現在)の学生が就学している。

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高商時代から海外に開かれた校風を特徴とし、現在も“グローバルな視野を持って現代の経済・経営の諸課題を解決できる実践的エコノミストの育成”を教育理念に掲げる長崎大学経済学部は、文部科学省が2012年6月に公募した「グローバル人材育成推進事業」(現在は「経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援事業」に改称)に応募し、同年9月に採択された。

文部科学省が打ち出したこの施策は、若年世代の「内向き志向」を克服し、グローバルな舞台に積極的に挑戦し活躍できる人材を育成するため、大学教育のグローバル化を推進する取り組みに対して重点的に財政支援するもので、長崎大学経済学部はその事業構想で“グローバル・ソーシャル・レスポンシビリティ(GSR)マインド”と呼ばれる概念を打ち出し、
・ 国際的な課題の解決に取り組むビジネス人材の育成
・ 長期海外留学によるグローバルな課題解決の実践力育成
・ 経済学・経営学の知識を英語で運用できる能力の養成

を実現するための体系を策定した。GSRマインドとは「多様な文化的背景や価値観を持つ国際社会において、地球規模の課題を解決することに積極的に挑戦する“志”」を意味する。長崎大学のグローバル人材育成推進事業の構想責任者で当時は理事・副学長も務めていた経済学部の須齋正幸教授は、GSRマインドを持つ人材について「国際的な問題や課題を解決しようとする際に、利害対立する当事者間でも新たに共有できるような価値観を主体的に作り出せる人材であり、そのために関連する人たちと信頼関係が構築できる人材」と説明する。

こうして策定された構想は、グローバル経済コースの新設や従来からの海外研修や留学制度の活用、新カリキュラムの導入、全学への波及といった運用・体制面での取り組みと、3カ月以上の留学経験やTOEICで800点以上の英語力、英文による卒業論文の作成といった明確な基準と目標の設定などが高く評価され、グローバル人材育成推進事業に採択された。

活発な国際交流と海外留学で世界を体感
コンテンツの豊富な自学自習システムを採用

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長崎大学経済学部では、採択された事業構想に基づき2012年度(平成24年度)後期から英語教育や専門科目の担当教員を新規に採用するなど教育支援基盤・教材の整備を開始し、2014年4月(平成26年度)から新カリキュラムのもとでGSRマインドを持つ人材育成を目指した「国際ビジネス(plus)プログラム」を開始した。このプログラムでは、半年から1年の海外留学が組み込まれ、留学先での専門科目の履修に必要な専門知識の修得や英語コミュニケーション能力を高める講義が開設されたほか、英語の自学自習用システムも導入された。

今回のグローバル人材育成推進事業の実施責任者で経済学部の学部長を務める岡田裕正教授によると、自学自習用教材は2013年2月頃から検討を開始し、同年11月には岡田教授や英語担当教員を含む選定委員会を開催して3社の製品を比較検討したのち、12月末にエル・インターフェースの提供するeラーニング教材「スーパー英語 AE2」を導入したという。その背景にある考えについて須齋教授は、「語学力をつけるという観点では英語の授業は重要ですが、単位数を増やすにも限界があります。基礎は高校までで修得しているはずですから、あとは個人が努力して自学自習するしかありません。ただその際には、TOEFLを主眼としていて著名な大学での導入実績があるなど、学生が地理的な理由で不利にならないように、できるだけ優れた教材の導入をお願いしました」と語る。また、選定委員として製品の選定作業にも参画した岡田教授は「レベル診断や模擬テストなどの機能と教材となる学習コンテンツの質と量、総学習時間など、10項目ほどを比較検討して決定しました」と説明している。

現実世界のネイティブとのコミュニケーションが
自学自習の意識と継続の動機を高める

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長崎大学経済学部では、グローバル人材育成事業で新規採用された3人の英語担当教員が1年次の前期の教養英語を担当することになった。2014年2月からスーパー英語を「英語コミュニケーション」の授業で利用している古村由美子教授は、「授業全体の10%をスーパー英語の課題の達成率で評価しています」とし、1年次の学生が前期に履修する英語科目が他にもあるため、「無理なく学習できるように、リスニングとリーディングの課題を毎週1セットずつ出していますが、これには1年次の前期のうちにしっかりと学習する態度や習慣を身に付けさせるという意図があります」と説明する。

2015年4月からの平成27年度からは、残る二人のネイティブ英語教員も授業でスーパー英語を利用する予定だ。

古村教授によると、担当する1年次のクラス全員がスーパー英語の課題を毎週学習しており、TOEICのスコアは4月の入学時から7月までの間で、担当する一つのクラスでは平均で約60点、なかには200点もアップした学生もいるという。ただ、途中で脱落せずに継続して自習できる習慣と自信をつけさせるために、あまり難度の高い目標値を設定していないが、まとめて処理できないように課題は出題されてから1週間で消去され、間違えても何回でもやり直して100点満点を取らなければ合格しないように設定するなどの工夫をこらして運用している。

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また、スーパー英語の機能として、個人やクラス単位で学習を記録・分析して学習状況の把握やクラス運営を容易にするポートフォリオ機能を高く評価している。「グラマーやリスニング、リーディングの割合がグラフで表示され、自分の勉強量を一目瞭然で把握できるため、学生は自分に何が足りないかがすぐに把握できます。 TOEFLやTOEICのスコアも簡単に入力できますし、クラスの平均値や全体の平均値もグラフ表示されるので、学習意欲の喚起や学習継続の手助けにつながります」(古村教授)。

長崎大学経済学部は2014年11月に、片淵キャンパスの新館1階に学生や教員が英会話や学習相談、海外ニュースの視聴、海外雑誌の閲覧などに利用できる“English Support Room”を開設し、同時に“TOEIC向上対策プログラム”を始動した。このプログラムは、英語の学習に意欲的に取り組む学生としてゼミの教員から推薦を受けた2年次以上の学生による英語学習グループで、このグループに参加している学生は全員がスーパー英語を利用している。その利用に際しては説明会も実施したが、まだ十分に活用できていない学生も見られるため、さまざまな機会を利用して、スーパー英語を有効活用するための説明や利用を促すなどの活動にも注力するという。

また同学部では2014年11月から、エル・インターフェースの開発したeラーニング・システムの仕組みと米国ニュース雑誌「TIME」が連動した英語学習プログラム「TEP(Time educational Program)」も利用できるようにした。TEPは、クラウド上で稼働するeラーニング・システムで、TIME誌の記事を学習コンテンツとして利用する。古村教授が担当する学生、国際プログラムコースの学生は、このTEPも利用しているという。

今後の展開について古村教授は、「English Support Roomも開設したので、学習グループを発足させようと考えています。スーパー英語で自学自習の意識とそれを継続する動機を高めるには、English Support Roomのような現実の世界でネイティブの教員や留学生と会話したり、イベントを開催したりするなど、対面型のコミュニケーションが必要です」とし、「スーパー英語を積極的に活用している学生は成績が向上しています。対面型のコミュニケーションで動機付けをし、スーパー英語で自学自習し、英語能力テストを受験するというサイクルをうまく循環できるようにしたいと考えています」と語っている。

case04片淵キャンパスの新館1階に開設された“English Support Room”。学生や教員が英会話や学習相談、海外ニュースの視聴、海外雑誌の閲覧などに利用できる。

原点回帰で新たなマイルストーンを設定
学生が夢に近づける教育環境の整備

長崎大学経済学部のグローバル人材育成推進事業は、学部全体から希望者を選抜し、各学年30~40名程度の規模で実施される。このプログラムでは、1年次に「国際関係概論(GSR概論)」を受講するほか、タイやバングラデシュで貧困問題に取り組む企業やNGOを見学し、現実の課題を体験する「GSR短期海外研修」を通して、特定の国や組織の枠や利害にとらわれず課題の本質を俯瞰する“GSR課題俯瞰力”を育成する。また、2年次には英語による専門講義や演習、留学生との共修ゼミを通して、多様な価値観や文化を持つ人々と信頼関係を構築する“多文化連携力”を育成する。さらに3年次には、半年から1年間にわたる米国・イギリス・ポルトガル・オランダ・イタリア・フランス・ベルギー・中国・韓国などへの長期海外留学や、双日やあいおいニッセイ同和損保の協力のもと現地企業やNGOでの海外インターンシップを通して、当事者間で合意可能な解決策を経済学・経営学の知識を活用して策定する“GSR課題解決力”を育成する。

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プログラムに参加する学生の派遣先となる連携協定締結大学は、検討中を含めると全世界11カ国18校(2015年2月1日現在)におよぶが、これらのほぼすべてが、須齋教授や岡田学部長らが国際会議で知り合った人たちとの信頼関係に基づいて実現されたもので、東奔西走して文字どおり足で稼いだ提携先だ。今後の展開について須齋教授は、「長崎大学を卒業した学生たちには、自分の夢に一歩でも近づいてほしいと思っています。そのためにGSR概論という科目も用意しています。1年次からでも夢を持ってもらえるように、講師はすべて外部から招聘してさまざまな体験談や経験を教授してもらおうと計画しています」と語る。また、岡田学部長は、「目標を達成するために、物事に主体的に取り組んだり必死になって挑戦する人を輩出したいと思います。また、海外から長崎大学に来てもらって、多様な人が集まる国際的なキャンパスになればと思います」と語った。

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